過去の自分が花開くとき
ある生徒
本当に久しぶりに教え子からの連絡。驚くやら嬉しいやら、複雑な思いを胸に彼のことが蘇ってくる時間。
自分の教員としての姿勢を作り上げる時に関わった生徒でした。
彼は私がまだ教員になったばかりの時に担当をした生徒。
やんちゃ盛りの高校生の集団。でも楽しいと感じることが多い毎日。
そこへ転校してきた彼は、ちょっと大人びた風貌で、そっぽを向ているような目線で登場!
ここは定時制高校。
様々な事情を抱えている生徒が多い中で、彼も自分なりの葛藤を繰り返してきたのだと感じられました。
そんな彼でしたが、すぐにクラスになじみ勉強も部活動も頑張るようになりました。
しばらくすると、仕事を始めたと報告があり、疲れている姿で登校することもありました。
当時は、アルバイトや就職している生徒も多く、みんながそれぞれ労わりあう姿を感じることも・・・。
生徒との関わり
私自身、定時制高校をまったく知らずに配置され、やるしかない!という気持ちでしかありませんでした。
しかし、前任者から言われたことは深く胸に刺さることとなったのです。
「生徒は、みんな大人。だから先生のことを受け入れるかどうかわからない!」
正直、言われていることがよくわからず、どうしろと言うのだろう?と考えもしました。そして、何度も何度もかみしめました。
先生という職業は自分を中心にして生徒が集まっていると思っていたのですが、この言葉にはそうではなくて生徒たちが真ん中で、先生は生徒の様子を伺いながら周りをまわっているだけ・・・。という風に捉えられると思ったのです。
私の考え違いも大きいと気づきました。学校は先生が中心なのではない、生徒が中心なのだ!ということです。
そんな中でも授業は始まり、自分にできることをしっかりやるしかない!と決めていた先生としての自分を生徒は好奇の目で見ていたかもしれません。
前任者との違いを見つけていたのでしょう。とにかく学校は生徒が主体。それを強く意識して関わりを始めたのです。
すると、生徒はあっという間に私のことに関心を示し、授業中でも話をしたがることもありました。でも、授業も楽しむ姿勢を見せてくたことは嬉しいことでした。
もちろん、授業をどのように成立させるかは考えていました。考えても考えても、机上の空論でしかないこと!実際に始まってから考えればいいや・・・という気持ちでスタートしたので、ちょっとホッとしたのですが。
教員として大切なこと
私の教員生活のスタートに関わってくれた生徒たちには、自分たちで率先してなんでもやろうということを話しました。できないということは言わず、まずやってみる。できなければ、どうしてなのかを先生や友達と一緒に考えていくというスタイルの授業。
定時制だから・・・などということは全く関係ありません。
みんな真面目に学校生活を謳歌しています。
そんな時に彼はやってきました。
仕事はバスの運転。しかも、大手のバス会社です。乗客の対応についても、レクチャーされたことがあります。一社会人として、生徒としての時間の彼とは違う面があるんだ~・・・と感心しました。
部活動も頑張り、陸上競技で全国大会に出場したこともありました。
そして卒業。
ほとんど音沙汰がなかった彼でした。
たまにどうしているかな?何やっているのかな?とは思うことはありましたが、それだけ。
そして突然のメールが来たのです!
どうやら、ずっと連絡を取りたかったようです。嬉しい・・・!!
別に用事があるわけでもありません。
でも、どうしても繋がりたかった・・・ということが文字の端々に感じられ、思わず涙が溢れそうになりました。
仕事も同じ会社で頑張り、管理職にまでなっているようです。
乗客への優しい気持ちをそのままに、きっと部下の皆さんにも親身に関わっているのだろうな。
こんなに嬉しいことはありません。
学校の教員という仕事は、多くの人たちと関わります。
しかし、永久に関わりを続けるこということは、まずありません。それでも、その時に関わった生徒に対しては、その時の状況がいつでも浮かんでくるのです。
あの時のままで・・・。
彼の結びの言葉が、私への最大の誉め言葉のように感じられました。
「やっと恩師につながり感激しました!繋がったことが、本当に嬉しいです!!」
最後まで教員という仕事を全うできたのは、関わった生徒がいたから!
どの生徒にもありがとう!と言いたいと退職時には思ったものです。
自分の教員としての生き方は、自分の軸を作り上げ、太くしていくことで出来上がるのです。
生徒と関わることは、責任を負うことでもあります。
だからこそ信頼できる教員になるべく日々を送らないといけない!
私にとって、教え子は宝物。可能性をイッパイ秘めた原石を少しでも磨くことができたのなら、教員としての一つの使命を果たせたと思っています。
過去の自分が、今になって花開いたように感じさせてくれた彼の言葉。
人との繋がりの大切さを心に深く刻んだのです。
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